「オーストラリアン・ジャズ at 東京ジャズフェスティバル 2010」
東京国際フォーラム
ジョン・マクベス
2010年10月
5階建てビルがすっぽり入るほどの大きさを誇る東京国際フォーラムの、5,000を超える座席数を備えるホールA。この壮大な会場は、日中35度前後という外の蒸し暑さを忘れさせてくれる冷房完備のオアシスだ。ステージの両側にはビルボード・サイズのスクリーンがあり、繊細な背景照明が爽やかなパステルカラーと東洋風のデザインを浮かび上がらせる。初日9月3日(金)の夜、その巨大な音響システムから、生オーケストラの迫力&ダイナミックなサウンドに匹敵する録音のイントロダクションが響いた。
その前夜の9月2日(木)、オーストラリア大使館の広報文化活動の一環としての支援により、ミニ・コンサートが開催された。これには、シドニーで活躍する「マイク・ノック・トリオ(The Mike Nock Trio)」、そして、トランペット奏者のフィル・スレーター(Phil Slater)、サックス奏者のマット・オティニョン (Matt Ottignon)、アルトサックス奏者の太田剣、トロンボーン奏者の中川英二郎の4名が加わった「ザ・マイク・ノック“東京”ビッグ・スモール・バンド(The Mike Nock "Tokyo" BigSmallBand)」が出演した。ノック氏のオリジナルをアレンジした曲を披露する7人組。言葉の壁を越えてミュージシャン達がぴたりと息の合ったサウンドを奏でることができるというジャズの特性である世界共通性を証明するかのような演奏だった。観客席にいた米国人フルート奏者ジェレミー・スタイグ(Jeremy Steig)に捧げるノック氏のファンキーな旋律に、各ミュージシャンが代わる代わるソロ演奏を行った。もちろん、彼らの上質な演奏は、9月4日(土)、フォーラムの巨大な地上広場の公演に集まった聴衆をも魅了した。
オーストラリアのジャズは日本で広く普及していないが、2002年に初の東京ジャズフェスティバル(オーストラリアは未参加)が開催されて以降、更に多くの熱心な日本のジャズ・ファンが集まっている。2006年よりオーストラリア大使館は、同フェスティバルを通してオーストラリアのジャズやアーティストのプロモーションを行っており、その結果、更に多くの日本人奏者のオーストラリア公演が実現されていくことも期待されている。大使館の広報文化活動に従事する熱意あるスタッフ達は、多様なオーストラリア文化を日本に紹介すべく専心しており、本イベントでもオーストラリア発の音楽に加え、地上広場に張られたテントにて多くの来場客がオーストラリアン・ワインや料理を堪能した。いくつもの巨大スクリーンに演奏の様子が映し出される地上広場ステージの無料公演へは、3日間で12,000人のジャズ・ファンが参集。屋内公演(有料)のチケット売り上げ総数は14,000枚で、イベントの国内企業スポンサーは20社を超えた。
9月7日(月)にはオーストラリア大使館の協力により、マイク・ノック・トリオは東京屈指のジャズクラブ「新宿ピットイン」でライブを行い、日本でのツアーを締め括った。小さな空間ではあるが観賞力のある少数の観客を前に、トリオはノック氏のオリジナル曲とスタンダードナンバーを巧みな演奏で紡いだ。
* ジョン・マクベス(John McBeath)は、オーストラリア外務貿易省の一機関である豪日交流基金の助成により来日した。
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